技術資料

板金部品の加工性設計(DFM)チェックリスト

板金部品の加工性設計(DFM)とは、追加の型や手直しなしで切断・曲げ・仕上げができるよう、フランジ、曲げR、穴、逃げの寸法を決めることです。目安の多くは板厚(T)に比例します。フランジは4T以上、内側曲げRは約1T、穴は曲げから2T以上離します。最終的には仕入先の金型で確認してください。

鋼板パネルを曲げるCNCプレスブレーキ

この目安の使い方

以下は、軟鋼、ステンレス、アルミのレーザー切断・プレスブレーキ曲げ部品の一般的な目安です。板厚(T)の倍数で示しているので、板厚が変わってもそのまま使えます。

実際の限界は仕入先のパンチ、ダイ、金型で決まります。目安は出発点と考え、図面を出す前にDFMレビューを依頼してください。

プレス部品も考え方は同じですが、金型でできることが多い一方、苦手なこともあります。プレス部品については別の技術資料で扱っています。

フランジ長さの最小値

曲げるときにV溝のダイにかかる長さが必要です。最小フランジ長さは約4T、または「V幅 ÷ 2 + 曲げR」のうち大きいほうが目安です。板厚1.5 mmの鋼板なら、6 mm以上を見込みます。

これより短いフランジは特殊な型や別の加工方法が必要になり、曲げがそろわないこともよくあります。

内側曲げRの指定

可能なら、部品内のすべての曲げを同じ内側Rにそろえます。型が1セットで済み、展開寸法も安定します。

Rの値は任意の数字ではなく、仕入先の標準金型で出る値を指定してください。

一般産業向けの代表値です。仕入先の金型でご確認ください。
材質(JIS記号)最小内側Rの目安備考
冷間圧延鋼板 SPCC1T薄板なら0.5Tも可能
溶融亜鉛めっき鋼板 SGCC1TRが小さいと亜鉛層が割れることがある
ステンレス SUS3041〜1.5Tスプリングバックが大きい。角度公差に余裕を
アルミ A5052-H321〜1.5T曲げやすい。可能なら圧延方向と直角に曲げる
アルミ A6061-T62〜3T以上割れやすい。より軟らかい質別も検討

穴と縁・曲げとの距離

  • 穴から外形の縁まで:1〜1.5T以上、かつ約1 mm以上。近すぎると縁がふくらんだり、残りの部分が弱くなったりします。
  • 穴から曲げまで:穴の縁から曲げの始まりまで、2T+内側曲げR以上。近いと穴が楕円に変形します。
  • 穴と穴のあいだ:縁どうしで1〜2T以上。
  • 曲げと平行な長穴は、丸穴より距離が必要です。目安は4T+曲げRです。
  • どうしても曲げの近くに穴が必要なら、曲げ後に加工するか、逃げ溝を入れます。その分コストは上がります。

加工できる最小の穴径

レーザー切断では、鋼板なら穴径1T以上が安全な目安です。薄板では0.5〜1 mm程度が実用上の下限です。それより小さい穴も切れる場合がありますが、真円度が落ち、ドロスが詰まることがあります。

プレスの打抜きでは、パンチを守るため、鋼板で1T以上、ステンレスで1.5〜2T以上の穴径にします。タップ加工やハードウェアを取り付ける穴は、メーカーの寸法表に従ってください。

曲げの逃げ(リリーフ)が必要な場所

曲げが切れ目のない縁や別の曲げとぶつかる箇所には、逃げを入れます。逃げがないと、角で材料が裂けたり、ふくらんだりします。

逃げの目安は、幅T以上、長さは曲げ線から内側R+T以上です。箱物では、2つのフランジが出会う角に丸または角の逃げを入れると、溶接前に角がきれいに閉じます。

圧延方向は関係するか

曲げRが小さい場合や、硬い材料では関係します。圧延方向と直角に曲げるほうが、平行に曲げるより割れにくくなります。

ステンレスやアルミで小さなRの曲げがある部品は、望ましい圧延方向を図面に記入してください。ただし板取りの効率が落ち、材料費がわずかに上がることがあります。

PEMナット・スタッド・スタンドオフ

  • 最小板厚、下穴径、中心から縁までの距離は、ハードウェアメーカーの寸法表に従います。品番ごとに値が異なります。
  • 板の硬さが、ファスナーの許容値より低いことを確認します。ステンレス板に使うセルフクリンチングファスナーは、ステンレス用(焼入れ品)が必要です。
  • ハードウェアは曲げから離します。目安は「中心から縁までの距離+曲げR」以上です。
  • 粉体塗装後に圧入するのは、塗装をマスキングする場合だけにします。そうでなければ塗装前に圧入し、ねじ部のマスキングを指定します。

レーザー溶接を前提にした設計

  • 継手のすき間は小さく設計します。レーザー溶接では、すき間を板厚の約10%未満に抑えるのが一般的で、切断と曲げの精度が求められます。
  • タブとスロットで部品どうしが位置決めされるようにし、治具を減らします。
  • 片側から溶接できる重ね継手やへり継手が適しています。
  • どの溶接線が外観部か、平らに仕上げる(グラインダー仕上げ)必要があるかを指定します。
  • レーザー溶接は入熱が小さく、ひずみが少ないため、薄いステンレスや外から見える筐体の継ぎ目に向いています。

曲げをまたぐ公差の累積

曲げを1回通るごとにばらつきが加わります。3回の曲げをまたいで測る寸法には、切断公差に加えて、各曲げの公差が積み重なります。曲げ1か所あたりの公差は長さと板厚により±0.2〜0.5 mmが一般的です。基準から曲げ4回分離れた形状は、図面の想定以上にずれることがあります。

重要な形状は、同じ面か同じ曲げを基準に、近い位置で寸法を入れます。複数の曲げをまたいで寸法を連ねるのは避けてください。

それ以外の寸法には普通公差を指示します。日本の図面では、打抜き寸法と曲げ寸法で表が分かれているJIS B 0408が一般的です。海外向けの図面ではISO 2768-mもよく使われます。詳しい表は「JIS B 0408 プレス部品の普通公差」をご覧ください。

粉体塗装の膜厚を見込む

粉体塗装の膜厚は、片面あたり60〜120 μmが一般的です。長穴、タブ、穴のはめあいが変わります。

ファスナー用の穴は大きめにし、ねじ部と合わせ面はマスキングし、マスキングする面を指定します。塗装後の寸法が重要な場合は、その寸法が塗装前か塗装後かを図面に明記してください。

展開寸法とK係数

展開寸法は曲げ伸び(ベンドアローワンス)で決まり、曲げ伸びはK係数(中立軸の位置)で決まります。K係数は材質、R、金型により約0.3〜0.5が一般的です。CADの初期値が、仕入先のプレスブレーキと合っているとは限りません。

展開図は参考として送ってください。仕入先は自社の曲げ補正表で計算し直します。展開寸法そのものが重要な場合を除き、寸法は曲げ後の形状に対して入れます。

送付いただきたいデータ

  • 曲げ後形状の3Dモデル(STEP)
  • 展開図のDXF(あれば)
  • PDF図面(公差、普通公差の規格と等級、材質、板厚、表面処理を記入)
  • ハードウェアの品番と数量
  • 溶接と外観の要求事項
  • 年間数量とロット数

板金DFMチェックリスト

一般産業向けの目安です。仕入先の金型でご確認ください。
確認項目目安確認
フランジ長さ4T以上☐
内側曲げR鋼板で約1T。硬いアルミは大きめ☐
全曲げで同じRできる限りそろえる☐
穴から縁まで1〜1.5T以上☐
穴から曲げまで2T+曲げR以上☐
最小穴径1T以上☐
角の曲げ逃げ幅T以上、長さR+T以上☐
小さいRの曲げに圧延方向を記入圧延方向と直角☐
ハードウェアはメーカー寸法表どおり下穴径、縁距離、硬さ☐
溶接継手の自己位置決めタブとスロット、小さなすき間☐
重要寸法は同じ基準から曲げをまたぐ寸法の連鎖を避ける☐
普通公差の規格を明記JIS B 0408またはISO 2768☐
塗装の膜厚とマスキング片面60〜120 μmが一般的☐
データSTEP+DXF+PDF☐

よくある質問

板金のフランジ長さは最低何mm必要ですか?

V幅にもよりますが、一般的には板厚の約4倍です。板厚1.5 mmの鋼板なら6 mm以上を見込んでください。

板金の内側曲げRはいくつにすればよいですか?

軟鋼とA5052で約1T、ステンレスで1〜1.5T、A6061-T6で2〜3T以上が目安です。できれば全曲げを同じRにそろえます。

穴は曲げからどれくらい離せばよいですか?

穴の縁から曲げまで、2T+内側曲げR以上が一般的です。これより近い穴は、曲げ後に加工しない限り変形します。

板金部品の普通公差はどの規格を使えばよいですか?

日本の図面ではJIS B 0408が一般的で、打抜き寸法と曲げ寸法で表が分かれています。海外ではISO 2768-mが広く使われています。

展開図も送ったほうがよいですか?

はい。STEPモデルとPDF図面に加えて、参考としてDXFをお送りください。展開寸法は仕入先が自社の金型に合わせて計算し直します。

DFMレビューはしてもらえますか?

はい。お見積り依頼の際にSTEPとPDF図面をお送りいただければ、コストやリスクが上がる形状をご指摘します。

図面をお送りください。1 営業日以内にお見積りします。

年間数量と、図面でいちばん厳しい公差を添えてください。金型費と単価を一度でご案内できます。